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あんぽ柿ができるまで

柿畑で柿の収穫

撞木(しゅもく)切り

柿剥き

硫黄燻蒸

乾燥


柿畑で柿の収穫

10月末~11月、柿の収穫になります。五十沢の山々はこの時期赤く色づきますが、よく見ると、その多くは紅葉ではなく柿畑。

古い柿の木は非常に大きく、二階建ての家の屋根以上の高さもめずらしくありません。しかし、柿の枝は折れやすく、高い柿の収穫は危険を伴いますので、近年は剪定して高さを抑え、柿を上ではなく横に育てるのが主流です。こうすることで危険も減少し、作業効率も良くなります。

高い柿は、昔から柿採り竿を使います。竹竿の先を二股に割ったもので、これで柿の枝を挟んで、ポキッと折って柿を収穫します。

自宅の作業場に運んだ柿

 


撞木切り

収穫して自宅に運んだ柿は撞木(しゅもく)をそろえます。これを撞木切りと呼びます。連(れん:柿を干すための縄)につけやすいように、柿の実のへたについている枝を撞木型に切りそろえるます。屋外で、じっと座ったままの作業なので、かなり厚着をしても凍えるように寒く、しばしば風邪を引きます(T_T)

  

左が切りそろえた撞木。右は収穫したままの枝。畑で収穫するときに撞木切りをする場合もありますが、拙宅では自宅に運んでから撞木切りします。

次の写真、左はふつうの剪定ばさみ。右は撞木切り専用はさみ。どちらも使います。

撞木切りはさみは、真ん中に枝を通す溝があり、刃が左右にあって両側を同時に切ります。簡単に撞木の長さを切りそろえることができますが…撞木切りばさみを使えない…形がいびつな枝も多く、ふつうの剪定ばさみも必須です。


柿剥き

まず、小刀(ナイフ)で柿のヘタを切り取る「ヘタ回し」をします。多くの家庭では、なぜかおばあちゃんの仕事…というのが定番です。次に皮をむきます。

道具としては、よく台所用品として大根やジャガイモなどの皮むき用に売られている「皮取り」「皮むき器」を使います。30年ほど前までは手で向くのが普通でしたが、昨今は機械が普及しました。バキュームで吸盤に柿のヘタ側を吸着し、モーターで回転させます。回転する柿に皮むき器の刃を当てるとしゅるしゅるときれいに皮をむけます。とはいっても、柿は1個1個大きさも形も違うので、馴れないとなかなかきれいに、薄く皮をむくことはできません。なお、熟練した人は、手作業で皮をむいても、柿1個の皮をむくのに5秒程度です。

 

むいた柿を専用の台(手作り)に、同じぐらいの大きさになるように分類しながら並べます。ならべた柿を連(れん:柿を吊すための縄。現在はビニール製)につけます。通常、柿の撞木を縄目に挟みますが、撞木がとれてしまった柿はクリップで留めます。

連につなげた柿。次に、これを硫黄燻蒸します。

 


硫黄燻蒸

以前は燻蒸箱と呼ばれる同じぐらいの大きさの木製の箱の中で燻蒸しましたが、最近は、このようにスチールのフレームにビニールカバーをかぶせて、この中で燻蒸することが多くなりました。燻蒸箱に皮をむいた柿を連でつるし、カバーをかぶせます。

硫黄の分量を計算し、カバー内で硫黄を燃やして燻蒸します。この硫黄の分量や燻蒸時間が、あんぽ柿を上手に作る1つのポイントになります。

硫黄で燻蒸することにより、表面を殺菌し、被膜を作るため、水分が多くても腐らずに、みずみずしい干し柿を作ることが可能になります。(とは言っても、干している間、温度湿度をちゃんと管理しないと簡単にかびたり腐ったりします)

硫黄は猛毒ですが、干している間に揮発しますので、できあがったあんぽ柿に毒性はありません。


柿ばせに干す

昔は家の軒下に縦に吊して干すのが一般的でしたが、近年、衛生対策の指導があり、専用の柿ばせで干すのが一般的できです(生活空間で干すと、髪の毛などの生活ゴミが混入しやすくなるから。同様に、出荷梱包作業も、昔は家の居間などで行っていましたが、居間は専用の作業小屋を使います)。また、縦に吊すと連の縄の痕があんぽ柿につくので、写真のように横に連を張るようになりました。

 

今は乾燥機を使った機械乾燥(火力乾燥、遠赤外線乾燥など)も多く使われていますが、拙宅では昔ながらの自然乾燥です。天候や気温に合わせて柿ばせの窓を開閉し、あるいは何台もの大型扇風機で強制換気し、あんぽ柿が腐らないように細心の注意が必要です。

次の写真は小粒で甘みが強い平核無(ひらたねなし)という品種の柿。

次の写真は、大粒で人気の蜂屋柿(はちやがき)という品種。

皮をむく前の平核無(左)と蜂屋柿(右)。どちらも渋柿です。

ちなみに、柿の品種は数多くありますが、そのほとんどは渋柿です。本来柿は渋柿であり、甘柿は、突然変異でたまたまできたものを人為的に繁殖させたもので、品種は多くありません。


1ヶ月~2ヶ月干してできあがり。飴色に透き通るような色合いがベスト。硫黄燻蒸しない干し柿と違って内部に水分を残しているので、とろっとグミかゼリーのように柔らかい食感が特徴です。(言い方を変えれば、表面は乾燥していても中身は「生」と言えるかも知れません)

とっても甘い和製ドライフルーツです。

なお、さらに乾燥させれば、普通の干し柿のように糖分が白く粉を吹き、カチカチに堅くなり、色も黒ずみます。堅くなったあんぽ柿は、スライスしてサラダに混ぜたり、漬け物やあんこに隠し味として混ぜ込んで、香り付けや甘み付けに使ったりするといいでしょう。

ちなみに、次の写真は拙宅の創作料理。毎年バレンタインデーに作っています。乾燥が進んで堅めのあんぽ柿(ただしカチカチに堅くなる前…羊羹程度の堅さ)を、溶かしたチョコレートにくぐらせた、あんぽ柿チョコフォンデュ。チョコの甘みとあんぽ柿のフルーティーな食感や香りが最高です。

他に、拙宅では堅めのあんぽ柿を切り開いて、ゆずの皮と重ね合わせて海苔巻きのように巻いた、あんぽ柿のゆず巻きなどもお茶請けとして作ります。

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